ヴィクトリア朝の日傘(パラソル)
こんにちは。傘と長靴のukiです。
夏本番、日傘の季節です。日傘は近年、とてもいろいろなデザインが出てきて、傘売り場を見ているだけでも楽しい。
もちろん、紫外線や赤外線を通さないという機能面でも優れたものを求める流れが出ているので、もしかするとレースや薄い布地を使ったデザイン優先の日傘は、心惹かれつつちょっと敬遠される向きがあるかもしれません。
それに、レースがふりふりしていたり、フリルがひらひらしている日傘は、通勤着やカジュアルなファッションには合わせにくいとうことも否めませんしね。シンプルで実用的な日傘のほうが持ちやすいのは確かです。
でも、そもそも日傘=パラソルというものは、イギリスのヴィクトリア朝で1830年代の後半ごろ、無蓋馬車(屋根のついていない馬車)の流行にともなって、馬車の中で差す傘として、つまり馬車に乗る身分であることを示す持ち物であったのです。実用性よりファッション性を重んじるものといえるでしょう。
イギリスでは、日傘が流行するようになる以前の18世紀頃、まず雨傘が雨よけとして使われるようになったのですが、当初、雨傘は馬車を持っていない身分の者が持つものとして見られ、上流階級には受け入れられていませんでした。
ただ19世紀初頭には雨傘は、実用的な雨よけとして男女・階級に関係なく受け入れられるようになっていたようです。
そこには、傘製造業者の技術革新により傘の軽量化やコンパクト化が実現されたことも関係したはずです。現在の我々にとって馴染深いカタチの傘を開発したのは、今でもよく知られるfox umbrellasでした。
実用的な持ち物であった雨傘(アンブレラ)の傘地は、黒が主流で、女性用には茶色や紺色のものもあったようですが、カラフルな雨傘というのは、19世紀いっぱい登場しませんでした。
いっぽうファッション性の強い日傘(パラソル)は、流行に合わせて、いろいろと変化したようです。色とりどりの布地を使ったものから、刺繍やレース、リボンなどで華やかに飾られたものなど多種多様。持ち手の部分も象牙や真珠母(!)などに凝った彫り物を施したものも少なくなかったとか。
↓小さくて可愛い日傘ですね!
W.Pフリス <ダービーの日> 1858年 テイト・ギャラリー蔵
ヴィクトリアパラソルと呼ばれる小型の日傘をさして無蓋馬車に乗る上流婦人。
持ち手の部分については、雨傘も凝ったものが多かったようで、とくに裕福なご婦人は腕にかけられるような鉤状に曲った持ち手ではなく、手があいていることをアピールできるまっすぐな傘が好まれたそうです。
↓フォックスのこの傘、素敵だけどまっすぐな持ち手は使いにくいしなあ、と思っていましたが、やっぱりバッグや買い物袋などぶらさげて歩かねばならない私のような者が持つ傘ではなかったわけです(涙)。
↓今日の記事はこちらを参考にしました。ヴィクトリア朝で日常的に使われていたさまざまなモノや娯楽施設などが紹介されています。